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エンチャント文字盤を利用した

よく見えない そんな場合の対応

視力の確認

コミュニケーションエイドの仕事をしていると患者さんの目の問題が持ち上がることがある。 脳血管疾患など脳中枢にダメージを受けたことにより、 例えば、視野が狭くなる、視力が落ちる、視野が歪む、ぼやけてしまうなどうまく見えなくなることがある。

ご本人にとっては突如発生した身体的異変のひとつであるが、立つ歩くに比べて表現しにくく、周囲は理解しにくいところがある。

「見えますか」と尋ねられて「見える」と答えても、小さな文字は見えにくいとか、漢字は見えにくいとか、疲れると見えにくいとかいろいろある。見る機能はこのように表現しにくくグレーな部分も多く通常の視力検査では評価しきれないところがある。

しかし、コミュニケーションエイドの場合は表示やアイコンやカーソルが認識できるか、見える範囲は十分か、動いてもわかるかといった 目標とする目の機能が明確で具体的なので比較的わかりやすところもある。 しかし、コミュニケーションや表現に困難があるので、見え方や見えにくさを表現してもらいそれを理解するのは容易ではないといった難しいところもある。

いずれにせよ、見やすさはコミュニケーションエイドにおいて第一関門と言える。

よく見えないを把握する

見え方の問題を把握するために簡単な方法を用いている。 このページトップのような紙 を コミュニケーションエイドの設置予定場所にかざして患者さんに見え方を確認してもらう。 この作業で、視界を確認し、コミュニケーションエイドやテレビの配置場所を検討するのだ。 コミュニケーションエイドでは、近づきすぎて視界を専有し過ぎないように実用的な距離や位置を決める。 また操作練習など行いながら疲労の少ない配置についても検討していく。

このような作業をしている途中で、とても変わった見え方をしているひとが見つかることもある。

視力確認の用紙は、MSゴシックで、ひらがなカタカナ漢字混じりの文が異なるフォントサイズで書かれている。どの大きさの文字まで読めるか確認してもらう。 フォントは一般に明朝体は見えにくく疲労しやすいため特に理由のない限り使用しないようにしている。

ある事例

ある患者さんはかつてメガネが要らなかったのに、病気の後は見えにくくなった。 上の方法で簡易的に調べてみると、視力はかなり低下し視野もかなり狭いようだ。

しかしある場所にベストポジションがありそこなら MSゴシックの24ポイントから26ポイントでひらがなとカタカナが見え、 48ポイントで漢字が見え、 その他の場所では大きな68ポイントでも見えないことがわかった。

パシフィックサプライのペチャラのキー文字がおよそ24ポイントだったので、これを使って練習を開始した。 しかし二三日すると妙な押し間違いが目立つようになった。 お聞きしてみると50音文字盤の全体が同じように良好に見えているわけではないことがわかった。 つまりベストポジションはそれほど広くなかったのだ。

そこで、キートップ表示26ポイントや28ポイントを作り、ペチャラ本体とキーガードの間に挿入した。写真上は標準状態のペチャラ(余分なキーが見えないようにテープで目隠ししてある)写真下はMSゴシック28ポイントでかなり違いがある。

ペチャラオリジナル
ペチャラ改善

作成し使用したキートップはここに置くので、興味のある方は自由にご利用ください。

ペチャラキートップ表示MSゴシック26ポイント

ペチャラキートップ表示MSゴシック28ポイント

しかしこれらの対策により見え方は徐々に改善しているがまだ十分でないことがわかった。 そしてここらがペチャラの限界と判断し、エンチャント文字盤の50音文字盤を準備した。

切り替えの際には両者を比較しエンチャント文字盤のほうが有望であると患者さんと確認した。

エンチャント文字盤は14.1インチモニタのノートパソコンを使っていたが、さらに15.6インチに変更し、文字表示を10%大きく、背景を白に変更した。

見やすさ改善

ここでようやく患者さんのOKサインを出してもらえた。これによって 見え方の改善に続いて操作方法の改善にとりかかることになった。

まとめ

コミュニケーションエイドがよく見えないという問題はこれまでもあったが、そのためにできることがあまりなかった。 このため従来ならペチャラのキー文字を大きくしたあたりでが限界であとは使う人に辛抱をお願いしていた。

道具の限界を超えるためには、限界の高い道具をつくる以外方法はない。 このような問題が、エンチャント文字盤をつくった目的の一つだ。 しかし超えるべきハードルはまだまだつづく。


2017/07/28 公開

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