かならずお読みください注意事項

エンチャントでおもちゃ

スイッチ操作練習用サンプル

スイッチ操作練習用サンプル

0 はじめに 院内研修会

先月はじめ、当院こども支援センターの訓練スタッフを対象に、操作スイッチやアプリについて研修会を行いました。これに先立って世話役さんから現場の様子などについて話を聞きました。

当院のこども支援センターは、学習障害などの問題を抱えたひとのほかに脳性麻痺などの身体的にも知的にも問題を抱えた人が県内外からこられるそうです。

このような人たちの訓練としてスイッチ操作にも取り組んでいるそうですが、なかなかうまくいかないというので今回の研修会を計画したのだそうです。事前に行ったスタッフ対象のアンケートでも、スイッチの商品知識やアプリケーションの情報などの要望が見られたそうです。そこでこれらを参考に準備にとりかかりました。

さて当日、会場には私の予想以上に若い訓練スタッフのみなさんが集まりました。こども支援センターは新病院開設の組織改変により多くのベテラン訓練士が異動しました。このため成人を担当してきた訓練士が異動してきたり新規の採用などでそれまでと様子が随分変わることになりました。

このように若いスタッフが増えたため、どうも昔からやってきたことがうまく引き継がれなかったのかもしれません。またスイッチなど工作の経験も少ないようです。このほかパソコンやスマホやタブレットなどの情報機器の経験もすくないようで、これらの問題がいくつか重なっているようでした。まあこれはあちこちでよく聞かれる状況とも言えます。

さて研修会では、参考になりそうな情報集積サイトをいくつか紹介し、スイッチの使いこなしなどの『適合技術』について説明しました。どうやらこのような分野への取り組みはこれまであまりなかったようです。またこの研修会をきっかけにして、これからも技術的な支援もしていくことになりました。

1 こどもの場合はどう違うか?

今回の研修会の準備のため、こども対象の福祉機器やアプリケーションや訓練について改めて調べて見ました。おとなの場合と単純に比較できませんが、種類はかなり多いようです。しかしこども分野のニーズの大きさにと多様さに比較すると、まだまだ十分とは言えないようです。

また、基本的に以前できたことを再度できるようになろうとするおとなの場合と、はじめて取り組んでできるようになろうとするこどもの場合とでは取り組みがずいぶん違ってくるでしょう。

また、何のためにやっているのかわかってやっているおとなと違い、よくわからずにやっている、場合によってはやらされているこどもでは取り組みを維持継続するための配慮も必要になるでしょう。

その昔、大先輩の市川洌さんからお聞きしたこんな話を思い出しました。

こどもさんとやるときには、たくさんネタを準備しておかないといけません。もしネタがきれるといっぺんに意欲がなくなって、てこでもうごかなくなることもあるし、反対にネタが続くとどんどんのびていくこともあるからです。

どうやらしっかり準備したほうがいいようです。さて準備するべきものは何でしょう?

2 どんなものがいいのか?

こどもたちに好かれて継続してとりくんでもらいうためには、とにかく面白くたのしいものである必要があります。勉強や訓練がすきなこどもはあまり多くありません。しかし遊ぶのが好きなこどもはたくさんいます。 このヒントはこども向けテレビ番組つくりにあるように思います。音や図柄の聴覚や視覚へのアピールにはかなりの配慮が感じられます。

訓練するつもりで訓練したり、勉強するつもりで勉強するのはこどもたちがもうすこしおおきくなってからでいいでしょう。 とにかく続けてもらうためには、テレビの延長で遊んで楽しんでもらうおもちゃを作るつもりで取りかかるほうがよいのではないかと思います。

これまでenchant.jsを使って、大人向けコミュニケーションエイドを作ってきました。これまでの方法や経験を使い、こども向けのものつくりに挑戦してみようと考えるようになりました。

3 基本的なアイデア

はじめてスイッチ操作に取り組む人を対象にしたサンプルを考えてみました。

テレビで見たことがあるものが自分の近くにやってくる。はじめはみているだけだったものにやがて自分も参加できるようになっていく。その後、関与の程度が徐々に増えていく。その過程でスイッチの選定や適合を進めながら操作の練習に取り組んで、徐々に上手になっていくという筋書きを考えてみました。

試作したサンプルは、画面に上の写真のような絵が表示されます。そして一定時間ごとに赤いボールが落ちてきて文字の上でバウンドして一音ずつ声を発し、言葉をつくります。またしばらくすると赤いボールが落ちてきます。

なにもしなければ、ボールが落ちてくるのを待って見ているだけです。しかしここでスイッチ操作をすると赤いボールが落ちてきます。時間制限はありません。 自分がスイッチ操作をすると赤いボールが落ちてくることを経験し学習して、仕組みを理解することをねらっています。

4 サンプル

サンプル1分間隔 ボールが1分間隔で落ちてきます。スイッチ操作でもボールが落ちてきます。

サンプル30秒間隔 ボールが30秒間隔で落ちてきます。スイッチ操作でもボールが落ちてきます。

こどもさんと遊ぶときには、おもしろがらせようとしておとなはいろいろお芝居をしたりしかけを準備したり、演出や前後関係などストーリーにも工夫して気を使うわけですが、それらの都合や相手のこどもさんの気づきの度合いに合わせてボール落下時間間隔を2種類準備しました。ご要望があればさらにつくります。いろいろ試していっしょに遊んでください。

またスイッチ操作は、パソコンではマウスの左クリック、スマホとタブレットでは画面タップが対応しています。外部スイッチをつなげて使う方法をご存じの方はそちらもお試しください。

5 おわりに

スイッチが使えるとチャイムをならして誰かを呼ぶことができます。このようにスイッチからはじまっていろいろな道具やいろいろな人とつながることができます。 おからだに不自由を持つ人にとってこのことは、生活の上で大変な重要な意味と将来の可能性を持ちます。

このためリハビリテーションでスイッチの練習をするのです。おとなの方にはナースコールを自分で押せることの大事さはわかっていただけるのですが、こどもさんはそうもいきません。大きくなってわかってもらえるのを待っているわけにもいきませんから、遊びながら練習することになります。

ところがすぐに次々と飽きてしまう、あのことこのこは好みが違う、こんなおもちゃが足りないというのが問題があります。(このほかにも不自由な人が使えるスイッチを見つけるのも、日常生活でそれをつかいこなすのもむつかしいという問題もあります。)

これはコミュニケーションエイドの問題とよく似ています。どこまで役に立てるのかやってみたいと思っています。

参考URL

スイッチなどハードウエア関係

一般向け教材

重度障害児童向け 無料学習アプリ


2018/10/5 公開

研究企画課リハ工学科にもどる