写真のリモコンは2021.3生産中止になりました
当院では以前から高位頸随損傷や神経難病などで重度の麻痺を持つ人がテレビなどの家電製品を操作する技術支援をしています。
過去には、 環境制御装置入門機 のページのように、日本シュータ社が取り扱っていた、シーケアパイロットⅡ(SENIOR pilot, evosoft)を利用していました。高価ではありましたが高品質で、扱いが面倒でしたがそのために活用範囲の広い大変よい製品でした。しかし2012年に国内での販売中止になり、やがて国外のサイトでも見かけなくなりました。大変残念ですが新たに同じものが入手できないようでは患者さんに紹介するわけにはいきませんのでお蔵入りとなりました。
当院ではこれに代わって現在では以下のような機器を使っています。
今回、この方面に初めて挑戦する当院に入院中の頸髄損傷の患者さんのために準備しましたのでこれを簡単に紹介したいと思います。
まず麻痺が重度な患者さんには入院後すぐにナースコールのサポートをします。
通常の押しボタン型ナースコールの操作が困難な場合、こちらの ロッド型ナースコールスイッチ や市販品の マルチケアコール (ケアコム)や古い市販品のブレスコール(松下)などを使いナースコールの自立できるように支援します。この人たちのなかから、さらにテレビなどの家電製品を操作したいとのご希望が出てくると今回紹介する取り組みが始まります。
従来よく利用していた、テレビトコールは小型で使いやすい良い製品なのですが、当院が2年前にリニューアルした時に病室のテレビが一新され、現在ではSORTEOというブランドになりました。テレビトコールはこのSORTEOというモデルに対応しておらずこのため候補から外れてしまいました。
テクノツールのなんでもIRもよく利用する機種です。しかしこれは基本的にパソコンに接続して利用するタイプのため、今回はじめてチャレンジする方には適していないので今回の機種からは外しました。なんでもIRは学習機能がありますのでテレビ付属リモコンがあれば今回のように新しいモデルにもそしてテレビ以外の家電製品にも対応可能という特徴があります。
パナソニックエイジフリーのレッツリモコンは二年前に購入したモデルでSORTEOというテレビに対応しています。レッツリモコンSTは一般の高齢者を対象として押しやすい大きな押しボタンを持っています。今回の患者さんは麻痺もありますのでこの機種も候補から外れました。
以上のような手順で、入力補助機能がついているレッツリモコンADを使うことにしました。事前にレッツリモコンADをワンスイッチのスキャンモードで設定し、SORTEOテレビに設定して。ロッド型ナースコールスイッチに3.5mmミニプラグををつけ、外部スイッチとして使用します。
まずご本人やご家族にやろうとすることと使用する道具の説明をします。
次にテレビを見る時の姿勢を確認しテレビの位置や方向を決めます。ベッドの角度や高さなどテレビの見え方に関係する事柄を一通りチェックします。
つぎにレッツリモコンADの位置を決めます。見やすさと赤外線信号が届くことが必須です。今回は上の写真のようにテレビの下にテープで仮止めしています。(やや斜めなのはミニプラグが突出して視界を妨げているからです)
つぎにあらかじめ選定しておいた操作スイッチの取り付け場所と操作部位と姿勢です。ここで担当理学療法士やご本人とも相談しながら決めていきます。ここで試運転をして動作の確認します。
このさい担当看護師も参加し、テレビの場合の追加作業と日常的看護の際の手順とのすり合わせもします。スイッチや手の位置、姿勢、配線などデジカメで記録し引き継ぎに使用します。
そしてもう一回試運転。ここで、スイッチとリモコンをつなぐケーブルが短いことがわかり、後ほど2m延長することになりました。
これら一連の作業が一時間弱で完了します。
これから日常的に使いながら手直し改善していくことになります。
今回紹介した患者さんの場合、肘関節の屈曲伸展運動でスイッチを操作してリモコンを動かしています。同じ運動をスイッチも何もない状態でやる場合よりもコツも必要で疲労もあることをお話しておきました。例えるならば素振りとボールを打つくらい違います。
ご本人もこれにすぐ気づかれると思いますが、ぜひ乗り越えていただき次のリクエストをよせていただきたいものだと思います。
2018/12/7 公開
2023/06/06 レッツリモコン生産中止を追記
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