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しゃべる文字盤のつくりかた

TIPS_1 セルとフォントの表示変更方法

スキャンしているメニュウ画面


コミュニケーションエイドの主な操作方式として、スキャン入力方式と直接入力方式があります。 スキャン入力方式では、複数の選択肢を一定のタイミングで順に表示し、この表示のタイミングに合わせてスイッチを操作して目的物を選択します。因みにレッツチャットでは赤いバックライトを点灯させて、選択肢の表示をしています。また 伝の心では、白地に黒文字の表記が、紺地に薄黄色文字表記に変わることで、選択の表示をしています。 表示方法としてこの他にも何種類か考えられますが、試作し公開したスキャンタイプのしゃべる文字盤ではセルの背景色を白から赤に変更する方法を使い、レッツチャットに外見を似せてみました。 しゃべる文字盤のコードの関係する部分を一例として下に示します。

Dim Color1 As Long '長整数型変数Color1
Dim Color2 As Long '同じくColor2
Dim Fcolor As Long '同じくFcolor
.....
Color1 = Worksheets("OPTION").Range("A1").Interior.Color  '"OPTION"シートのA1セルから選択色を取り出す
Color2 = Worksheets("OPTION").Range("A2").Interior.Color  '"OPTION"シートのA2セルから背景色を取り出す
FColor = Worksheets("OPTION").Range("A3").Interior.Color  '"OPTION"シートのA3セルから文字色を取り出す
.....中略.....
.
.
        Range("a1").Select
            With Selection.Interior
                .Color = Color1
                .Pattern = xlSolid
            End With
.....作業A.....
        Selection.Interior.Color = Color2
.....後略.....

1-3行 : 色指定に利用する変数を長整数型で宣言します。Color1は選択色、Color2は背景色です。またフォント色はFColorとします。Excel2007以降は扱える色が大きく増えた関係でColorプロパティの指定により大きな数字を扱える長整数型を使います。
5‐7行 : しゃべる文字盤では、上記3種類の色を、OPTIONワークシートのA1からA3セルの背景色で設定しますがここでそれを読み取って、変数にそれぞれ代入します。(整数型変数を使うと、色によってエラーが出たり出なかったりしてややこしくなります)
11行 : A1セルを指定します。複数のセルを指定するには、Range("A1:D5")のように左上と右下のセルを指定します。
13行 : 指定したセルの背景色を指定色(Color1、赤) に変更します。
14行 : 同じく全面塗りつぶしを指定しています。本来この行は不要です。用心のためつけましたがまだ出番はありません。
16行 : 作業Aの部分には、セルが赤から白に変わるまでの作業、具体的には、音を鳴らす、タイマーを動かし、キー入力を見張るなどの作業が入ります。
17行 : セルを元の背景色(Color2、白)に戻します。


上記のコードは、A1セルを赤に変更しやがて白に戻します。 これに続いて、A2セルで同じ操作を行い、以下順次、A3、A4、A5と繰り返していくと、上から下へ動いているように見えます。 また、A1、B1、C1、D1 と繰り返すと左から右へ動いているように見えます。 上記の複数セルの指定方法を使うと、ブロックスキャン(レッツチャット、ハーティーラダーなどで採用している何行何列かを一体でスキャンする方法)も実現できます。
このようにしゃべる文字盤では、色もスキャンの回数も、方向(タテヨコ)も自由に作れます。 もし、従来にない画期的なスキャン方法のアイデアをお持ちの方はこの様なやり方で実現させることができるかもしれません。


しゃべる文字盤では、各セルを文字盤のマス目に見立て、文字を記入して使います。ここで フォントの色、大きさ、種類の変更、セルの罫線、背景の塗りつぶしパターンなどもさまざまな目的のために変更可能です。 因みにフォントを変更するには
Range("A1").Font.Name = "MS Pゴシック"   'フォントの変更
Range("A1").Font.Size = 15         '大きさの変更
Range("A1").Font.Color = RGB(255, 0, 0)  '色の変更
Range("A1").Font.Bold = True        'ボールドに変更
さらに文字列を変更するには
Range("A1") = "こんにちは"
とします。
以上でエクセルのワークシートで目に見えるものを自由に変更できるようになりました。 ここで説明した方法をつかってかの有名なセルベーダーが作られています。(若い人はこんなの知らないでしょうが、コードが公開されていますので大変勉強?になります)


視力や色覚に不具合がある人では色使いの工夫で不便を少なくなることがあります。 しゃべる文字盤は標準で、白い背景色に黒いフォント、スキャン時には背景色を赤にしますが、人によっては赤背景の黒文字は見えにくいかもしれません。もしかしたら赤背景の白文字の方がよいかもしれません。(そのように変更するにはどうすればいいか、もうおわかりになりますか?)
聞くところによると、弱視の方は黒背景に黄色文字が都合のよい人が多いようです(日本ライトハウスの配慮ページをご覧になってください)。また色使いに気をつけて不自由な方のご不便を少なくする、色覚バリアフリーという分野もあります。この分野に関心のある方はどうぞ調べてみてください。
お気の毒なことに、視覚に不自由を持つ人でもコミュニケーションエイドが必要になることはあります。また反対の人もいます。なんとか力になりたいものです。


色設定への工夫
背景色やフォント色の設定には、通常RGBコードやカラーインデックスを指定します。多くの解説サイトでも、下記のような説明が行われています。
Range("A1").Font.ColorIndex = 3
Range("B2").Font.Color = RGB(255、0,0)

多くの場合、コミュニケーションエイドをお使いになる人の近くにいる人たちにとってこの作業は簡単ではありません。いくらマニュアルを詳しく丁寧に書いてもそれでできるものでもありません。(ご家族に詳しい方がいて全く問題ないこともあります。)
そこでひと工夫して、上のコードのように、OPTIONワークシートの所定のセルの色を読み取りそれを利用して表示するようにしました。 この方法なら見た色がそのまま反映されますので誤解やまちがいを少なく、多彩な色の使い分けができるようになります。何よりもエクセルをいくらか使いなれた人なら手順を説明すればセルの背景色変更はできるでしょう。(担当の訪問ヘルパーさんが勤務表作成にエクセルを使っていたので設定変更の操作できた例があります。)
さらにOPTIONワークシートのどこかに、色見本セルをいくつか準備し所定のセルにこれをコピペすることにすれば、小中学生でもできるかもしれません。(お孫さんがやってくれて大喜びの例もあります。) また電話で手順を説明しながらサポートできそうです。そしていざとなったら(又はまずいことになっても)、サポート済みのしゃべる文字盤ファイル一式を電子メールで送りコピーして使ってもらうこともできますので、失敗をそれほど気にしなくてすみます。

コミュニケーションエイドにはとかくサポートが難しいとかサポートの引き受け役がいないなどのはなしが付きものです。 しかし現場には、コミュニケーションエイドをお使いになるご本人の他、ご家族、医療介護スタッフ、近所のお知り合いなどいます。 この皆さんが使いこなせる作りにすることが、サポート負担の軽減のためにもまず重要と思います。
また、そのおうちに出入りしている人々があれこれ話しあって、やってみて、できたできた、よかったよかったとなると、たとえ手間がかかっても患者さんはなんだか幸せそうです。 現場ではお手上げで専門家がやってきて解決でもいいとは思います。しかし
『週末には息子が帰ってくるのでやってもらいます、作業内容を知らせてください。』と患者さんからメール。
みなさんの幸せのためには、このやり方も悪くないと思います。


まとめ
今回ご紹介した方法を使えば、エクセルのセル、文字の表示を自由に変更できます。これでお使いになる方の目にかかる負担や疲労をより少なくして、より活発にいきいきと取り組んでいただけることを目指しています。
コミュニケーションエイドがうまくいかなかったかたのお話をおききすると、 よく見えなかったとか目が疲れたからというお話が意外にあります。
当院でも設定変更の他、大きなモニタに変更した事例もあります。 しかし、若い人には理解しにくいでしょうが、50歳近くなると誰でもものがよく見えなくなるのです。 パソコンでも表示フォントを変更したり、モニタを変更したり、目の衰えに応じていろいろ工夫をするものですが、コミュニケーションエイドにはこの様な配慮がまだそれほどありません。作った人たちが若かったからでしょうか。
しゃべる文字盤、TIP編の一番目は、テーマが 目 でした。
『その人は本当によく見えていますか?』


2014/5/28 公開

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