当院の研究企画課には作業場所と車いすなどの保管場所があります。作業にも保管にも比較的広い場所が必要なのためその場所は病棟からいくらか離れています。車いすは高床中床低床超低床の4種類を3階4階5階病棟に在庫し、病棟スタッフは必要に応じて使用し、使った分は随時補充する、『とやまのくすり』方式(お若い方はご存じないかもしれません。その場合は、文末の参考URLをご覧ください)をやっています。このため車いすの補充や回収のたびに運搬作業が必要になります。入退院の人数にもよりますが、一日平均10台以上の車いすを一人で運びます。このような事情でこれが業務効率化のキーポイントになります。今回は車いす運搬を効率的に行う方法についてご紹介します。
5年前に新病院の建設と職場の引っ越し計画が持ち上がった際、いちはやく旧病院の空き部屋確保に取り組みました。そしてその結果、小部屋6部屋からほぼ同じ床面積の大部屋へ変更できることになり、作業環境はかなり改善されることになりました。しかしその反面、病棟との水平距離が150m増えこれに上下移動も加わり、適度な運動を日常的にすることになりました。これはこれで健康のためには喜ばしいのですが、そのために仕事に時間がかかるようになりました。この業務の円滑化と効率化を図るため、運搬や移動の改善が必要になりました。
まず病棟業務を調整し一度行ったらいくつかの仕事をこなすことにしました。またその移動の際にできるだけ効率的に車いすを運ぶことにしました。そのための方法をいろいろ試した結果、このページトップの様に、車いすの上に別の車いすを逆さまに載せてこれを片手で押す、つまり両手で同時に4台運ぶ方法が、廊下の幅、エレベータの大きさ、通行する人々(半分は歩行訓練の患者さん、そして何人かの電動車いすユーザ、ストレッチャ)との行き違いなどの要因も考慮し現実的であることがわかりました。その後何回か予行演習、時間帯の調整、失敗や改善により順調にできるようになりました。
このようなおかしな格好で車いすを運んでいるとだんだん周囲のみなさんにもおなじみになり、すれ違いや、幅が狭い自動ドアでの譲り合いもうまくできるようになりました。
急に停車すると上の車いすが落下する可能性があります。取り扱いには練習が必要です。またそれ以前に、速度は控えめにし、廊下やエレベータの寸法、混雑の時間帯、歩行者など周囲との調和が安全のためには大切です。
一人で4台の車いすを運んでいるとよほどおもしろいのかすれ違う人たちからも声がかかります。私としてはただ目的にかなった方法でやっているだけなのです。ただ上下の二台の車いすがシンメトリ(対照)になっているところと一見上に乗って運ばれている車いすとそれを乗せて運んでいる車いすが結局どちらも運ばれているところが幾何学的にも機能的にもおもしろく思っています。
今回ご紹介した事例がみなさんの参考になれば幸いです。
「おきぐすり」って何? 一般社団法人全国配置薬協会
https://www.zenhaikyo.com/what/index.html
2020/10/02 公開
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