おもちゃで遊ぶことはこどもたちの発達や成長において有用であると一般に考えられています。たとえばおもちゃで遊ぶことで、まず手足をよく動かし、つぎに何か意味のある動作をまねしたり、続いて対象に対して目的のある作業をし、さらに考えて、計画を立て、実行し、成功したり失敗したり、泣いたり笑ったり怒ったり、喜んだり反省したり発見したり、ほかのこどもと仲良くしたりけんかしたり、好きになったりきらいになったり… このようにおもちゃ遊びは、身体と精神心理の両面で成長の縮図のような働きかけを、幼年から高年齢まで広い年代にわたって与えてくれます。
またおもちゃの歴史は長く、古い遺跡からおもちゃ?と思われるものがときに出土し発見されることがあります。またおもちゃは時代や地域により多様でまたそれぞれの文化がつよく反映されています。
様々な不自由と障害をもつこどもたちのためにおもちゃを用いる取り組みも古くから行われてきました。そして近年では、市販を始めとする一般向けおもちゃでは使いにくいことや遊びにくいこともあること。そしてその結果期待が十分に満足されにくい、場合によっては予想外の不都合もあることがわかってきました。
このような理由により、この分野に関心をもつ人々によって障害を持つこどもたちに配慮したおもちゃつくりが取り組まれました。これらの活動により、こどもたちの興味や反応を引き出すにはどうしたらいいのか検討が重ねられました。また安全のため、どのような配慮がなされるべきかの検討も進められました。さらに耐久性の不足など手作りによる課題も徐々に明らかにされました。
時代は流れ、大人の世界もこどもの世界もおもちゃの世界もずいぶん変化してきました。むかしながらのおもちゃとならんで、電子情報系のおもちゃも人気です。当院の小児科外来の待合室では、親御さんとお子さんが並んで座ってそれぞれの板を指でこすって時間を過ごしている光景がよく見かけられます。
今も昔も変わらないもの、今ではすっかり変わったものを見つめ直し、いままた障害をお持ちのこともたちのためのおもちゃ作りにとりくむ価値があるのではないかと思います。古い資料(参考URL参照)を調べると、寝たきりや座れないこどもたちのためのおもちゃがほしいとの要望が書かれています。
待合室のいすに寝転んで板をこすっているこどもさん(ちなみにこのこは歩けます)は我と我が身をもって、私達にこのこたえを示してくれているのです。(多分、ご本人は待ちくたびれて単に遊んでいるだけなんでしょうが。)
2021/04/30 公開
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