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障害をもつこどもたちのためのおもちゃ 2

つみき

つみきのおもちゃ

0 はじめに

寝たきりやうまく座れないこどもたちのために座位保持装置を作るお手伝いを何年か前までやっていました。それぞれ使用する人の事情に合わせて好ましい姿勢を保てるように工夫し、多くの場合はオーダーメイドで製作します。そのようにして顔や手の動きが落ち着いてくると、通常のおもちゃで遊べる場合もよくあります。

しかし顔の向きや手を動かせる範囲はなかなか制限もあり、自由にできるわけではないこどもさんもおられます。そして普通のおもちゃでは、よく見えないとかうまく動かせないといったことが起きるのです。

ここまでは、意志伝達のために情報機器を操作しようとしている重度マヒのおとなの状況とよく似ています。その人の意図を機器に反映させる部分に色々と工夫することになります。しかしこどもさんの場合は、意志伝達に興味関心があまりないことがかなりあります。またこどもですから文字やことばもまだまだです。

ではそれまでのあいだ、見たり聞いたり動いたり考えたりする練習をおもちゃで遊びながらしてもらいましょう。この何の変哲もないのが今回のお話です。

1 今回の試作品 つみき

前回、Web Toy 3では6個の正方形が飛び跳ねる試作品をご紹介しました。飛び跳ねる動作自体はなかなか派手でよろしいのですが、その一方で青い正方形を持ち上げたり落としたり積み上げたりできるところから、これを改善して積み木をつくることを考えました。

ところが使用していた、enchant.jsの物理エンジンの能力にいくつか制限があることがわかりました。たとえば三角形が作れませんので積み木には足りません。このほかに先々のプランに比べ私の能力不足が見えたので思いきって、物理エンジンBox2Dを勉強し直しバージョンアップすることにしました。勉強には参考URLのサイトを勝手に使わせていただきました。どうもありがとうございました。

今回はEnchantをはなれ、JavaScriptと本家のBox2Dでつくりました。このページのトップ画面のような積み木のおもちゃをつくりました。

つみき大
つみき小

上のリンクを開くと起動します。画面上の『はじまり』をクリック(タップ)するといくつかの積み木がおちてきます。積み木にタッチして指を動かすと動きます。離すと落ちます。指ではじく(フリップ)ととんでいきます。積み上げたり、くずしたり、落としたり、投げたりできます。特にルールはありません。好きなようにやってください。

2 おわりに タブレットを使う理由

これまで不自由のあるこどもたちのためにおもちゃ作りはそれほど順調ではありませんでした。おもちゃの効果について具体的な定義がなくまた定数的評価尺度も手法も確立していません。つまりおもちゃの効果とは何か?どうすれば計測できるかが明確になっておらず、まさに雲をつかむような状態でした。さらにこの問題を不自由のあるこどもさんについて考える場合には、さらに困難が上乗せされます。

このような生物方面や人間方面ではよくある問題へのアプローチにはいくつかの条件が必要と思います。条件の一番目は、まず誰でもきちんと定数的に計測できるモノサシをつくること。そうです、℃のCはセルシウス(Anders Celsius)のCです。『暑い』とか『寒い』ではなく、22℃と数字で表現できることで取り組みが科学になります。

続いて条件の二番目は、おもちゃの音や動きなどが正確に再現できることです。「昨日の3番目とおなじことをもう一回やる」とか「一昨日の5番目の2.5倍の音を出す」とか「先週月曜日の8番目と金曜日の3番目の中間でやる」などが自由にできるようになると偶然うまくいったことが糸口になって理屈や原因がわからなくても、なぜかいつもこうなるというものを発見する可能性があります。

条件の一番目はかなり手強いとおもいますが、二番目の方はあなたのポケットにもはいっている、あの板を使うと実現できるようになるのです。これがタブレットやスマホでおもちゃをつくる何番目かの理由です。

順番が前後しましたが、理由の一番目は、多くのこどもたちがタブレットに興味関心があり、熱心に取り組んでもらえる(可能性が高い)ことです。これは授業に興味関心をもってもらうために日夜苦労されている方々にはご理解いただけると思います。理由の二番目は、これらの機器が安価になり『おもちゃの価格帯』に入りつつあること。そして理由の三番目は、今回ご紹介したように、個人でもいろいろ自由にできるようになってきたことがあります。そしてこどもたちが大きくなっていろいろな情報機器を使おうというときにいくらかでも今回のようなおもちゃの経験があれば、ハードルをこえる助けになるかもしれないというのが理由の四番目です。

参考URL


2021/05/21 公開

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