かならずお読みください注意事項

障害をもつこどもたちのためのおもちゃ 28

声や音のおもちゃ その2

エコートーイ 画面

今回はエコーがかかりますぅすぅすぅすぅ...

0 はじめに

買ってあげたその時はとても喜んで遊んでいたのに、いつの間にか飽きてしまって、いまではあまり遊んでくれなくなった。そんなことありませんか? そうおもちゃの話です。クリスマスや誕生日、その他のお祝いで、こどもにおもちゃを買ってあげたおとうさんやおかあさん(おじいさんおばあさん)のみなさんにはこんな経験をお持ちではありませんか。

ところがこの反対に、ガチャポンを大事にしたり、古いぬいぐるみが大好きだったり、シールをペタペタたくさん貼ったり、紙とハサミとテープに夢中になったり、石をひろってきたりムシをつかまえて箱に入れたりなんてこともあります。そのお子さんが何を好きになるのかはこんな具合にまるで予想がつきません。こんなこどもたちの世界ってなかなか面白いですね。こんなふうに『沼にはまる』(むかしはドツボにはまると言いました)おもちゃやあそびは昔からあるようです。みなさんもこどもだった頃はまったおもちゃや遊びはありませんか?

我が家ではある時期、何かの景品でもらったエコーマイクというおもちゃが流行りました。大きなプラスチック製のマイクにむかって声を出すと、エコーが掛かってきこえるシンプルなおもちゃです。このマイクで歌を歌ったり、お話をしたりとなかなかにぎやかでした。このおもちゃはその後、小児の訓練現場に行って、こどもたちの遊びに使われました。もしかしたら声を出す練習か大きく呼吸する練習だったのかもしれませんがわかりません。長く使われたそうですがその後どうなったかはもうわかりません。ふとあのおもちゃを検索してみると今でも販売していました。これはなかなかロングセラーのようです。

1 今回はエコー

さて前回はマイクに話した声や音が、繰り返し繰り返しスピーカーから聞こえるおもちゃを作ってみました。いかがだったでしょうか。 小さなカオスだとか、なにが面白いのかわからないとか、いろいろとご意見もありました。

何しろこどもさん相手のおもちゃですので、なるべくアクの強いキワモノを作るように心がけましたので、その結果おとながちんぷんかんぷんなのはまあしかたないことだと思います。

今回はこれをさらに発展(?)させてエコーマイクならぬエコースマホ(タブレットやパソコンでも可)を作ってみました。

音の扱いについては前回と同様にWebAudioAPIを使用しましたので説明は省略します。 手順としてはエコーをつくるために遅延時間を短くして0.5秒程度にして、減衰をごく小さくしました。

マイクとらえた声や音にエコーがかかるおもちゃ

マイクとらえた声や音にエコーがかかりさらに高い声になるおもちゃ

マイクとらえた声や音にエコーがかかりさらに低い声になるおもちゃ
今回も、お試しいただき、不思議な気持ちになってください。
もしかしたら、洞窟気分になるかもしれません。

2 おわりに 手作りをプログラムでやる意味

エコーマイクが売っているならそれを買って使ったほうがいいとお考えのかたもおられるでしょう。仕事ははかどるし能率的ですよね。

しかしすこしおまちください。みんなが能率や効率を優先して同じことをしてそれでいいのでしょうか? 多様性を尊重しようとか、持続可能な開発目標とかはどうしたらいいのでしょう。

手作りでこのような問題を解決できるかも知れません。教材やおもちゃを手作りする人たちはずいぶん大勢おられるようですが、ここで紹介している手作りのプログラムも基本的にはよく似た目的をもっています。

例えば、

  1. 身近な材料でパッと簡単に作ることができる
    身近なパソコンでパッと作ることができる(両方ともパッとはできず困難はある)
  2. 子どもの姿に合わせてアレンジしやすい
    使う人に合わせて0.1秒、1ミリなどの微調整できる
  3. おもちゃを購入するよりコストがかからない
    手持ちのパソコンを利用できればかなり低コストになる
  4. 繰り返し遊んだりたくさん使われたりして壊れてしまっても、作り直しやすい
    これは全く同じ。
    しかもコピーして電子メールに添付して欲しい人にあげることができます。
    また他の人からもらうこともできます。
    ホームページで公開すれば欲しい人が自由に持って帰るのでさらに手間がかかりません。

このようにこのサイトで紹介しているプログラムの手作りも、基本的には従来の手作りと同じ目的をもっています。そしてさらに、より高度で負担の少ないより多くの人が手軽に利用できるように工夫を加えようとしているのです。

このやり方なら、数百人から千人くらいの人々を対象とした活動を少ない負担で個人的に実施できることと思います。これは福祉機器などニーズの小さい活動に適していると考えています。

いま各地の町内会では、『町内のお知らせ』をネット経由で全世帯に配布するところが増えているそうです。この作業もパソコンやネットで省力化しているので実現できているのです。従来のような人手に頼ったやりかたでは町内会の担い手もたまりません。つまり持続可能ではないのです。

このようにやり方を変えると、能率や効率も変わります。難しいことがやりやすくなったり、困難なことに可能性が出てきたりするのです。

従来の手作りもこれと同様に、やり方をいくらか変えることで従来の壁や限界を超えることができるように思います。

そしてこれが大勢の人たちが力を合わせて、そのかわりひとりひとりが自分の事情や都合を我慢して全体の目的を実現しようという話ではありません。このようなやり方はこれからの日本ではますます難しくなると思います。

ごくごく少数の人の個人的な取り組みで、多くの困難が実現可能に変わることを多くの人たちに知って頂きたいと思います。


2023/06/16 公開

研究企画課リハ工学科にもどる ←もくじはこちらです