さてぐるぐる2はいかがだったでしょうか。お正月を楽しく過ごすのににいくらかでもお役に立ったでしょうか。もう存分に使ったという人も、まだゆっくり準備中とか練習中というひともおられるでしょう。やはりそこはそれぞれのちょうどよいペースでやっていただくのがよいと思います。
さて、ぐるぐる2を使ってすごろくを何回かやり、おともだちとも仲良く(?)なり、またスイッチ操作もだんだん上手になったころに、もしかしたら少し変わったことが起きているかもしれません。
ご存じのように、さいころはどの目も偏りなく同じようにでます。これは数学で習った通りどの目も1/6の確率で出ます。(試しに調べてみたら1の目は大きな穴なので重心が偏るため1の目が出る確率が高いなどという話もありました。こりゃ本当でしょうか?)
それなのにぐるぐる2を使っていると、どうも変だ、ちょっとおかしいぞと思われることがあるかもしれません。それにはある理由があります。 ぐるぐる2は見た目こそさいころをイメージさせますが、スイッチを操作して動かしたり止めたりしている人の意志がいくらか反映できるように作ってあります。その気になれば、思った目がだせる可能性がいくらか(うまくやれば、かなり)あります。
そしてこれとは別のもうひとつの「気づき」があったのかもしれません。まずこちらの方から話を始めましょう。
何しろすごろくをこどもたちとやるとかなり盛り上がることがあります。例えば1がでるとがっかりして、6がでるとおおよろこびなどキャーキャーとにぎやかになるでしょう。勝てばうれしく負ければくやしく、そしてもう一回もう一回となりがちです。
こんなすごろく遊びに『さいころの役目』で参加しみんなの仲間になっていると最初のうちはそれだけでうれしくて楽しいでしょう。でもそのうち何かをしたくなるかもしれません。
例えば、おともだちといってもかわいらしくてすきなこもいるし、いじわるでらんぼうできらいなこもいるでしょう。(これは単に想像です)すきなこが6がでてにこにこおおよろこびをすると、もういちどよろこばせたいと思うのはまあこれは自然なことですね。きらいなこを何回もがっかりさせたいと思うようになります。これも自然なことです。こんなふうに色々考えるようになるかもしれません。
だいたいこのようなことにかぎって、普段よりやる気がでるのはありがちな話です。このようにひらめきとやる気が合わさると普段できないと思っていたことができたりしますのでぜひ見逃さないようにしたいものです。
実はスイッチやサイコロやタブレットなどはこちらのためのネタみたいなものです。本当に大事なのはこちらの方で、これはだれにとっても同じことです。
さて前回ご紹介したアプリでは、まだ速すぎて思い通りにサイコロの目を出せないというひともいるかもしれません。そこで、矢印の回転速度を3分の1にしたものを作りましたので、そのような方はこれをお試しください。ここまでゆっくりだったらうまく止められるでしょうか。お試しください。
ぐるぐる3 モーメンタリその2 パソコンでEdgeまたはFirefoxを使う場合はこちらをどうぞ
モーメンタリとオルタネイトの違いについてお知りになりたい方は試しに両方やっていただくのが一番時間がかかりません。しかしもっと詳しくお知りになりたい方は、 不自由を持つひとのためのマウス作り 2 モーメンタリとオルタネイトをご参照ください。
しかしこの試作品をすごろくで使うと、『そんなのいんちきだ』と言われるかもしれません。もしかしたら、『ぼくには次、3を出してね。どうもありがとう。』となるかもしれません。こうなるともはやすごろくとは言えませんね。でもコミュニケーションになりそうですからまあそれはそれでいいでしょう。
一方、純粋にすごろくをやりたい場合は公平なさいころを用意しましたのでこちらをご利用ください。
ぐるぐる2 モーメンタリその2 パソコンでEdgeまたはFirefoxを使う場合はこちらをどうぞ
さて、すごろくもさいころも飽きたというかたにはこのようなやり方はどうでしょう。 まず紙に矢印の大きさに合わせて穴を開けます。そしてそのまわりにいろいろ絵や文字や印をつけます。このページのトップ画像をご覧ください。
このように手作りで手を加えるとそのひとの興味関心に合わせてバリエーションのひろいおもちゃにできるでしょう。
そしてこのようなおもちゃでそのひとの新しい発見につながるといいですね。
今回お話した『できる』と『できない』の境界には城壁のように超えるのに苦労するものも、砂に描いた線のように簡単に超えられるものもあります。そして状況に応じて調整や適合などの工夫によって『できない』を『できる』に変えられることも少なくありません。
またその道具がお使いになる方にとって扱いにくいとながく使ってもらうことはなかなかできません。そのような場合には、『やればできる』を改良して『もっと楽にできる』とか『もっとうまくできる』への改善が必要になります。
ところが市販品では調整や適合ができなかったり、できたとしても不十分なことがあります。商品の多くはより多くの普通の人々を対象に作られていて、標準的な寸法、形状、重さ、価格になります。その結果として標準的でない人々は苦労と不便をこうむることになりがちです。
このような問題を解決するためには、手作りでそのひとにあわせることが以前からよく行われています。今回の試作品もその一例で、アプリを手作りしたからこのような手直しも可能になります。
手作りすると融通がきき市販品をつかうと低コストになります。両方を適材適所で用いて多様な選択肢から選べるようにすればよりよい支援が広がることと思います。
道具と予算と時間は多くの人々にとっていつも悩みの種です。ところが運良く(または運悪く)短期間ですが特殊な道具を試すことができることがあります。数年前は、視線入力の装置でこのようなことがよく行われていました。この機会にあの人にもこのこにも試してもらいたいと思いますが、やってみると思うようにうまくは進みません。
例えば車いすに乗り慣れた人が新製品を試してみるような場合に比べて、初めてつかう道具の場合には慣れるのに時間がかかり、またすぐに疲れてしまいます。限られた時間の中でうまくいかなくても、練習不足か疲労か能力不足かはわかりません。またうまくできた場合でもそのひとのニーズや好みに合っているかはわかりません。
このような場合は、長所と短所など特徴、効果とその限界、そして心身など適用の条件をまず指導役が自身で試し体感し。続いてどのくらいの練習でどの程度のことができるのか、その結果そのひとにどのようなメリットがあるのか、そのメリットはそのための労力、時間、費用などと釣り合いそのひとの為になるかをひとりひとりについて考えて行くのがよいと思います。
試しにやってうまくいっても結局好きになれなくてやめることもありますしその反対もあります。試した結果に一喜一憂するのもほどほどにしたいものです。ここでは一見地味な取り組みの積み重ねが大切と思います。
特に、『試してみたけどだめでした。原因も改善の余地もわかりません。』これでは将来につながる成果もありませんし、お試しになった方にも周囲の方々にも申し訳ないことだと思います。
2022/01/14 公開
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