かならずお読みください注意事項

コミュニケーション支援と機器操作支援

機器操作支援のススメ

ダブル技研 りーだぶる3

ダブル技研 りーだぶる3

0 はじめに

重度障害者のコミュニケーション支援はご本人やご家族の生活の場面でも医療福祉の場面でも共に重要性が指摘されています。しかし実際の取り組みつまり意思表出のための作文練習は多くの場合なかなかはかどりません。自分の思いを文字にして表現することはそれ自体簡単なことではありません。またそれに加え、障害の有無に関係なく作文が苦手な人は少なくありません。このように大切さはわかるがおもしろみに欠け、練習にもいまひとつ熱が入りません。そして高齢の方の場合このような傾向が目立つようになります。

そこでコミュニケーション以外の目的にスイッチ操作や機器操作を利用して、毎日の生活に役に立つ趣味や娯楽的な取り組みによって、身体的能力の向上や生活の改善を図るとともにコミュニケーション機器操作のための基礎もつくる方法が考えられます。

今回はそのような事例をふたつ紹介いたします。

1 テレビを自分で操作する

テレビは気晴らしや暇つぶしにはずいぶん役に立ちます。そしてテレビを自分で自由に操作できると日々の欲求不満もいくらか軽減できます。反対にこれができないといらいらがつのります。特に身体に不自由をもつ人や、小さいこどもさんではこの傾向が強く表れます。

一般的にコミュニケーションよりもテレビに強い関心を持つひとは少なくないと思います。同じスイッチ操作の練習をするならテレビの方がいいかもしれません。テレビを操作する福祉機器として次のような製品があります。

このほかレッツチャットの現行モデルにはテレビの電源、チャンネル、音量の調整機能があります。

テレビトコールは、1スイッチ操作で音にあわせてoffにすることでテレビの電源、チャンネル、コールを操作します。

レッツリモコンSTは、大きめのボタン操作で、レッツリモコンADは1スイッチのスキャン操作でテレビを操作します。

なんでもIRはパソコンから操作しますが、たいへん多くの家電製品を操作できます。

スマートスピーカやAIスピーカも話題になり注目も集めていますが、何しろ『話しかけないと動かない』ですのでここでは省略したいと思います。

テレビ操作が自分でできるようになると患者さんの満足感は高く、やる気が出てきて次のチェレンジにつながる場合がよくあります。またテレビの音量を大きくして家族を呼ぶのにも使えます。

2 本を読む

『テレビはもう飽きた。わたしは本を読みたい』

読書は自分の好きな本を自分のペースで進めることができるのでお好きな人はかなりいます。しかし紙の本は、不自由のある手では扱いにくくページはめくりにくいものです。そのため病気やけがをして不自由になり、好きな本が目のまえにあるのがつらいからと処分される人もいます。実にお気の毒なことです。

このページのトップ画像のような自動ページめくり機も商品化されていますが、高価で普通の人にはなかなか手が出ないところが難点です。このような場合、本を電子化してパソコンで読む方法が役に立つかもしれません。

まずパソコンでワープロ文章を読むことから始めます。使用するフォント、文字数行数、モニターの大きさも配置も検討します。ここで眼鏡が必要だとわかることがありますし、訪問の眼鏡屋さんもあります。このようなことを事前にしっかりやっておかないと、読み始めてから苦労することになります。

次にパソコンの操作ですが、使用するスイッチを 『できマウス』 (節約するならゲームパッドの改造)経由でパソコンにつなぎ、 JoyToKey や antiMicro 等のソフトを使って使用する文書表示アプリのページめくりキー操作をスイッチからできるように設定します。これで読書の準備ができました。

次に本を電子化する作業について説明します。

まず患者さんのご希望の本を了解をうけ破壊します。これをドキュメントスキャナ(オートシートフィーダーつきスキャナ)でpdfファイルを作ります。この方法でかなり厚い本でも一時間くらいで電子化できます。はじめは手入力、音声入力、フラットベッドスキャナなども試しましたが時間と労力が非常に大きく実用的ではありません。また破壊を伴いますので図書館などの利用はできません。また著作権違反に抵触する可能性もありますので、実際の作業には注意が必要です。

作成したpdfで読書に問題なければこれで完了です。しかし文字の拡大や読み上げが必要な場合はocrでの文字認識などの作業がさらに必要になりますがこれらは省略します。

3 おわりに

『なにしろもともと口数の少ない人でしたから、この道具を使っても話は少ないと思います』

コミュニケーションエイドの使い方はひととおりマスターできたのに、その方はどうも使っている様子がありません。そこでご家族にお尋ねしたところこのように話しがありました。

言われてみればそのとおりです。話の多い少ないは病気や障害とは関係ありません。またコミュニケーションエイドを使いすぎるのもある意味で変です。コミュニケーションエイド(そして言語それ自体も)は基本的に稼働率が低い道具なのです。

それならばおもしろいことやたのしいこともやったらいいじゃないか。せっかく道具(パソコン)はあるしスイッチはあるんだから。コミュニケーションばかりじゃ身体がなまるよ。これが機器操作支援のすすめです。

ゲームもやりました。患者対主治医の病棟将棋対局では大勢集まりにぎやかでした。 コミュニケーション以外にも機器操作の応用を広げて考えていきたいものです。

4 付録 ドキュメントスキャナscansnapの復活

2005年から翌年にかけて販売された、富士通の民生用ドキュメントスキャナ、scansnap fi-5110eox3 を上記の電子化をはじめ、長年業務に使用していました。しかしWindows7のサポート期限切れが近づきこれをWindows10にアップグレードした際に、周辺機器のうちこのスキャナが使えなくなりました。具体的には、メーカーからWindows10用ドライバが提供されないこと、富士通製のscansnapのアプリケーションがサポートされないこと、そしてacrobat7もサポート切れと三拍子そろいました。最近では紙つまりなど調子はいまいちですがついに限界のようです。

しかしWindowsでだめでも、古い周辺機器への対応が比較的よいubuntu方面ではどうだろうと思いいろいろとしらべて見ました。その結果SANE(「Scanner Access Now Easy」の略)というソフトがこの分野でメーカーを超えて多くのモデルに対応しているようです。ubuntuの世界はなかなか雄大です。試しにSANEプロジェクトのホームページで対応状況を調べると、対応済みの1500以上のモデルのなかに、scansnap fi-5110eox3も含まれていました。それにしても1500以上のスキャナで動くソフトとはただ事ではありません。参考URLのふたつのサイトにはインストール方法から使い方まで説明してあります。その通りにしたら無事使える様になりました。よかったよかった。まだまだいけそうです。

参考URL


2019/06/14 公開

研究企画課リハ工学科にもどる ←もくじはこちらです