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車いすメンテナンス コトハジメ 5

タイヤの交換

もし近くに車いすユーザがいて、 その人の助けになりたい、力になりたいとおもったとき、 あなたは何をしたらいいのだろうか?

部品と工具

0 はじめに

車いすを使うとタイヤがすりへります。タイヤは文字通り消耗品です。車いすの使い方にもよりますがタイヤは通常数年くらいもつようです。車いすを活発に使えばこれが短くなりますし、あまり使用しないと長くなります。ところが車いすの方はメンテナンスがいい加減で乗っているけどあまり動いていなかったりするとタイヤがすりへるまえに車いすのほうがいたんでこわれてしまうことがあります。こうなるとタイヤを交換することはありません。

つまり車いすを定期的にメンテナンスして長持ちさせ、どんどん活発に車いすを利用するとタイヤの交換が必要になります。このページをお読みになる方は、多少なりとも車いすのタイヤ交換に関心がおありの人、つまりすでに車いすのメンテナンスについてそして車いすの活用についてもなかなか順調にいっている人だと思います。皆さんがサポートしている車いす利用者さんたちにとっても、皆さんにとってもこれは喜ばしいことです。よかったですね。

しかしタイヤ交換を業者さんに頼むと時間もお金もかかります。お金の問題はひとまずおいて、タイヤ交換作業の間自分の使い慣れた車いすをつかえなくなるので困る人もいます。作業の間の使用する代わりの車いすつまり代車ですね、この手配で困る人もいます。業者さんも目の前でぱぱっとやってくれればいいとはわかっていても、そうもいかない事情もあります。さあどうしたらいいでしょう。

ムシゴムの交換も自分でやっているしブレーキの調整も自分でできるひとはここでもうひとつステップアップして、タイヤ交換に挑戦してみてはいかがですか?もしうまくできるようになれば、タイヤの事で困っている人にちょっと待ってもらう間にぱぱっと交換できるようになるかもしれません。これで時間のことも代車のことも心配なくなります。このように自分でできると余分な仕事が消えてなくなることがあります。おまけに費用も節約できるかもしれません。何よりも仕事が早く片付けられます。早く仕事を片付けて早く家に帰りたい人にはこれがおすすめです。

今回は車いすのタイヤを交換する手順について説明します。自転車のタイヤも基本的に同じ方法で交換できますので同じ技能を活用できます。

1 作業の手順

準備

すり減ったタイヤ

このくらいになったらそろそろ交換を考えてもいいでしょう。あまりすり減っていると患者さんから交換のリクエストがくるかもしれません。患者さんにはいろいろな職業の方がおられます。プロかもしれませんので気をつけましょう。

納入された新品のタイヤ一式

新品のタイヤです。今時はタイヤとチューブなど交換する部品一式がこのような形で納入されます。当院ではある程度まとめて購入し在庫しています。

表示ラベル

タイヤサイズ表示です。交換するタイヤと同じサイズでないと交換できません。タイヤ注文の際はよく確認しましょう。ちなみに22x13/8 22がタイヤの直径(インチ)、13/8はタイヤの幅(いんち)です。これはタイヤの側面にもサイズ表示がありますので確認しましょう。

取り外し作業

外されたタイヤ

車いすからタイヤを外しました。中央が使用した工具です。19mmのスパナは二本必要です。外したナットやワッシャーなどがなくなると、組み立てできなくなりますのできちんと管理が必要です。部品の数が20,30となるとどれがどれだかわからなくなる人もなかにはいるようです。元通りに組み立てられない。部品が余ったといった事になる方はお使いになる人の安全のため十分な練習と訓練をおすすめします。

空気を抜く

空気の入り口のバルブです。ゴムのキャップを外し、ぎざぎざのついた円筒を回して緩めます。ここでタイヤの空気がしゅーと音がして出てくることが多いのですが、もしかしたら円筒を全部外しても空気が出てこないこともあります。

ムシを抜く

その場合は先端をつまんで引き抜いてください。ここで一気に空気が抜けます。この写真ではムシゴムが切れているのがわかります。ここまで空気が漏れなかったのは単に運が良かっただけのようです。

ナットを緩める

バルブをリムに固定しているナットを10mmスパナで緩めます。

バルブを押し込む

バルブの先端を指で押し込んで中のチューブがリムから離れるようにします。これであとの作業が楽になります。 次にタイヤを手で握ってリムとタイヤに隙間を作ります。このときタイヤとリムが付着していることが多いですが手作業で全周にわたってタイヤとリムの付着をはがします。

タイヤレバーをかけている

その隙間にタイヤレバーの先端を差し込み、タイヤの耳(タイヤのリムと接する部分を耳といいます)を外に引き出します。このときタイヤレバーの末端をスポークに引っかけると仕事がしやすくなります。

二本目をかけている

数センチくらい間隔を空けてもう一本のタイヤレバーをかけます。

三本目をかけている

車いすや自転車のタイヤでは、二本か三本かければタイヤが外れ始めます。もし三本かけて外れなければ、真ん中の二番目のタイヤレバーを外して三番目のさらに外側にかけます。このようにしてタイヤの手前の耳を全周に渡ってリムから外します。

バルブをリムから抜き出す

そして先ほど押し込んでおいたバルブをタイヤの耳とリムのすきまから引き出します。

チューブを引き出す

バルブ部分からチューブを引きはがし、チューブの全体を取り出します。

タイヤをリムから外す

タイヤの反対側の耳も外します。このときは素手で簡単にタイヤははずれます。

ばらばら

外れました。ここまでの作業で取り外したものは使用済みですので、手荒に扱っても特に心配ありません。

取り付け作業

ここから新しいタイヤをとりつけます。ここから取り扱うものは新品ですので手荒に扱って傷つけると困ったことになります。取り扱いには気をつけましょう。

リボンの確認

リムの内側のゴム製のリボンを確認します。切れていたら交換が必要です。この写真では問題ありませんのでこのまま使用することにしました。

新品タイヤのはめこみ

まず新しいタイヤをリムに入れます。このときタイヤレバーは使いません。片方の耳を全周入れます

バルブをリムの穴に通す1
バルブをリムの穴に通す2
バルブをリムの穴に通す3

新しいチューブをタイヤとリムの隙間から入れます。まずバルブ部分から入れるといいでしょう。

チューブをリムの中に入れる1
チューブをリムの中に入れる2
チューブをリムの中に入れる3

その後全周にわたりチューブを均等に偏りがないようにして、リムの中にしっかり!!入れていきます。慎重に入れます。

新しいタイヤをリムにはめ込む

バルブ部分からタイヤの手前の耳を入れていきます。ここでも工具は使いません。すこし力がいりますがこの方が安全です。

指の力が少なくてここでタイヤレバーを使う場合は、チューブをレバーとリムに挟んで穴を空けないように十分気をつけてください。失敗すると振り出しにもどってしかもチューブの修理が加わります。最低の展開です。 タイヤが新品だと摩擦が強く滑りが少なく作業しにくいことがあるかもしれません。そのような場合は石鹸水をぬると作業が楽になります。新品の虫ゴムを挿入するときも石鹸水を使えば楽にできます。はみ出た石鹸水は拭き取りましょう。中に残った石鹸水は特に害はありませんので気にする必要はありません。

固定ナットをとりつける

タイヤがリムにはまったら、バルブ固定のナットを取り付けます。特に力を入れて締める必要はありません。むやみに締めるとチューブを痛めます。

組み替え完了

新品のムシゴムを入れて、円筒を締め、空気を入れます。 この作業を左右2セットやります。

組み替えたタイヤを車いすに取り付けた

完成です。お疲れ様でした。

2 おわりに

作業のコツをいくつかまとめておきましょう。

まず古いタイヤを外すのはかんたんですが新しいタイヤを取り付けるときは慎重な作業が必要です。 新しいチューブはねじれなくかたよりなく均等に入れるのがコツです。 タイヤレバーは自転車用を使いましょう。タイヤレバーはタイヤ取り外しのごく始めに使用するだけです。あとは素手の作業が効率的です。

練習には古い車いすで、タイヤを外したり取り付けたりの練習を繰り返すと二回目よりも三回目と手際が良くなり、慣れれば15分ほどで一台分ができるようになります。 このような技能が車いす利用者との信頼関係をつくる糸口になることがあります。

これは避けたいタイヤのトラブル話

空気が少なくなってタイヤがつぶれている車いすに人を乗せて(乗って)動き回る。 このような状態では、リムとタイヤの間にチューブが挟まれ破損することがあります。かなり大きな穴があいて修理不能、チューブ交換となることもあります。

またタイヤとリムが離れて別々に回転するようになると、チューブの偏りが始まります。チューブの一部が外に出て来たり、さらにこれが車軸に絡んだりするともう動けなくなります。 これらの修理は今回説明した方法の応用で可能ですが、手間も時間も金もかかります。

患者さんを乗せたままこのような状態になるともう移動はできません。別の車いすやストレッチャを準備して乗り移ってもらわないと戻れなくなります。体調が悪く屋外で天候が崩れたりするとかなり困ったことになると思います。

同じことが自動車でも起きます。運が良ければ動けなくなります。運が悪ければ止まれなくなり危ない目にあいます。

これらのトラブルを未然に防ぐには、常日頃から車いすやタイヤをよい状態に保つこと、異状に早く気づくこと、そして機敏な行動で危機を回避することが重要になります。みなさんのご無事をお祈りします。

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