転倒転落事故を防止するために今では多くの病院や施設で離床センサが使われています。当院も事情は同じですが、主に使用しているのは月ヶ瀬離床センサです。開発から早いものでもう20年近くたちますが、原理がシンプルでわかりやく、取り扱いしやすく、低コストのため気兼ねなくつかえ(ここが大事ですね)、しかも応用範囲も広く現場の創意工夫も生かせるところが特徴です。やはり道具はシンプルで応用がきくのが長く残る様です。この間に小さな改善のため三回モデルチェンジをしましたが基本的な部分はほとんど変わっていません。
これまでも何回かホームページで話題にしてきました。文末の関連する話題をご覧ください。 ところがここ二、三年それまでなかったトラブルがありました。今回はその問題と対策についてお話しします。
当院は三年前に新病院に移転しました。このときナースコールシステムが一新されました。これにあわせてすべての離床センサもナースコールスイッチもコネクタを変更しました。
移転後一年ほどすると、それまでなかった不具合の連絡がくるようになりました。それはタグが抜けてもコールが鳴らないというものです。離床センサがこれではいけません。早速しらべて見ると電極間の電気抵抗がやや大きくなっていました。そこで紙やすりで電極を磨き汚れを掃除して修理しました。旧病院時代もまれに同じことがありましたので、これでしばらく様子を見ることにしました。
しかしまたしばらくすると別の病棟で同じことが起きました。旧病院での十数年間でもあまり起きなかった出来事が短い期間に続きました。どうも頻回に離床センサを作動させる人が長い期間使用する場合に起きやすい現象のようです。これで看護現場は注意すべきポイントが明らかになりました。またそれ以降は同様の不具合が起きたらその都度修理せず、離床センサをまるごと交換して、問題のある離床センサを手元に集めることにしました。
一台数万円する離床センサでこのような調査をすると金銭的に厳しいですが、所詮一台数百円の月ヶ瀬ですのでまあ気にする必要もありません。
何ヶ月かすると現場の看護スタッフのおかげで調子のよくない月ヶ瀬離床センサが何台か集まりました。それらを一台一台をしらべて見ると、接点間電気抵抗が2から3オームと大きなものが複数個見つかりました。どうもこれが原因のようです。
月ヶ瀬離床センサの電極は銅板を使っています。かなり安定した素材ではありますが、ここは露出していますので影響は無視できません。しかしこの方式は旧病院で十数年以上の実績があります。こうなると新病院移転の際に変更したコネクタも、ナースコールシステムも怪しい気分が感じられます。しかしこうなると事が大きくなってきます。
もともと低コストな月ヶ瀬離床センサなのですから、対策も低コストで立てた方がスマートです。
また同様のトラブルは通信配線のお仕事ではよくあることでしょうから、その方面ではいい道具や方法があるだろうと探してみました。その結果、呉工業の接点復活スプレーとサンハヤトの接点ブライトが見つかりました。
ご注意 上の写真では接点ブライトはやや小さく見えますが、実際は10分の一程度の小ささです。
今回は、CRC556で有名な、呉工業の接点復活スプレーを購入して試して見ました。
問題のある離床センサの電極に使用してみると、みるみるうちに抵抗値が下がります。これは驚き。コネクタの電極にも試して見るとこちらもどんどん下がります。
これは手間も少なく低コストであとは耐久性が気になるところですが、患者さんの入院期間ですのでたかがしれています。また通常業務での離床センサの設置や回収や点検の作業にスプレー噴射の作業を組みこめば、業務も円滑に進みます。
原因がわかるまでは悩むところもありましたが、ポイントが明らかになれば今回のように対策はかなり安く実行できることが多いようです。これからも観察を続け維持管理メンテナンスを続けて行きたいと思います。
本当は、月ヶ瀬離床センサの銅板電極を総入れ替えする準備を始めていました。しかし最近は年をとったせいかついつい楽なほうにながされます。でも今回はおかげで安く手間の少ない方法が見つかりました。
同様のトラブルでお困りの方は(そんな人いるだろうか?)どうぞお試しください。
2019/07/19 公開
研究企画課リハ工学科にもどる
←もくじはこちらです